最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)1180号 判決 1965年7月02日
上告人
伊藤治郎
代理人
鈴木由治
上告人
合資会社三升屋
代表者
中山孝吉
代理人
大久保
上告人
有限会社大善
右代表者
清水谷英男
代理人
大島正義
被上告人
宇田川とよ
代理人
藤井暹
小島将利
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告人有限会社大善代理人大島正義の上告理由第一、二点、上告人伊藤治郎代理人鈴木由治の上告理由第二点、上告人合資会社三升屋代理人大久保の上告理由第二点について。
原判決が、被上告人のした本件解除権の行使を権利の濫用にあたらないと判断したことは、その確定した事実関係に照らして相当であり、これに民法一条の解釈を誤つた違法は認められない。論旨は採用することができない。
同大島正義の上告理由第三点について。
借地法一一条の規定は、土地賃借人の義務違反である賃料不払の行為をも保護する趣旨ではない。したがつて、土地賃借人に賃料の不払があつた場合には、賃借人は催告を要せず賃貸借契約を解除できる旨の所論特約は、同条に該当せず、有効である。論旨は、独自の見解であつて採用に値しない。
同鈴木由治の上告理由第一点について。
賃借人の承諾のもとに土地賃借人の権利を譲受けたものは、当該土地賃貸借契約によつて定められている賃借人の権利義務一切を承継すると解するのが相当である。論旨は、独自の見解であつて排斥を免れない。
同大久保の上告理由第一点について。
原判決の所論の点に関する事実上の判断は、その認定した間接事実に照らして是認しえなくはない。論旨は、原審の専権に属する事実認定を非難するに帰し、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)